結論「イタリアでは治療費用補償は最低600万円は必要」

先に結論を書いておきたいと思います。

のむてつ所長のむてつ所長

イタリアでは「疾病治療費用」「傷害治療費用」の補償額は、最低でも600万円は欲しいところ。あと注意したいのは、医療費が高額になる医療搬送が必要となったとき(イタリア⇒日本は約300万円)。重病時に医療搬送を必要とするかどうかで、必要な「救援者費用」の額が変わります。(下で詳しく説明します)。

このページの目的

海外旅行保険は、本当に1年で20万円以上もする「保険金支無制限」のものが必要なのでしょうか?短期の保険なら、本当に、クレジットカード付帯の保険だけでは不足するのでしょうか?

このページでは、イタリアの医療費の価格を実際に見て、海外旅行保険をどれくらい掛けておく必要があるか、クレジットカード付帯保険で対応可能なのか、それとも不足するのか、などについて検証します。

※東京海上日動やAIU、JI(ジェイアイ)傷害火災、HS損保などの保険会社が公表しているデータから、できるだけ客観的に見ていきたいと思います。(記事下に、すべての出典リンクを掲載)

まず大前提として

海外旅行保険を考えるときに、まず大前提として2点、頭に入れておいてください。

海外旅行保険の額を考えるときの大前提2つ

  1. 一番使う確率が高いのは「治療費用」。この額をメインに考えるべき。
  2. 高額医療費の原因のほとんどが医療搬送。なので「救援者費用」の額も重要

クレジットカードの宣伝でよくある「最大補償額●千万円!」というのは、実は利用確率の低い死亡補償の額だったりします。最大補償額が大きくても、あまり意味がありません。保険額を決めるのに重要なのは、「治療費用」と「救援者費用」です。覚えておいてくださいね。

判断基準

治療費用に関して↓

イタリアで盲腸手術:約70万円

  • 日本とほぼ同じか、少し高いくらいの医療費(日本の10割負担額と比較)
  • 集中治療室(ICU/CCU)の額: 15万円/日(*2*4)⇒20日間300万円
  • 病院の1日の部屋代: 個室6万円/日(私立)(*4)⇒20日間120万円

救援者費用に関して↓

医療搬送イメージ

  • 日本への医療搬送(定期便): 約250万円(*4*5)
  • 日本への医療搬送(チャーター便): 約2240万円(*8)
    ↑ヨーロッパからはチャーター便はほとんど使われていない

イタリアの医療費の価格&実際の事例

盲腸(虫垂炎)手術費用は総額約70万円

盲腸手術の費用データ(ローマ)

・40万円(手術代のみ。公立/私立ともに。2013年*4)
・53万円(手術代のみ。公立/私立ともに。2009年*5)
・110万円(病室代/看護費用/技術料など総費用。2008年*6)

入院時の部屋代は個室1日3〜5万円

病院の部屋代(1日あたり)
・4万円(公立病院、一般病棟、2013年*4)
・6万円(私立病院、個室、2013年*4)
 ※薬代、X線代、検査費は含まず

集中治療室(ICU/CCU)は、最高1日54万円

集中治療室(ICU/CCU)の費用データ(1日の価格)
・15万円(ローマ、公立/私立ともに、2013年*4)
・13万円(ローマ、公立病院、2008年*2)
・19万円(ローマ、私立病院、2008年*2)

重大な事故に遭ったときなどは、↑この額が、毎日かかることになります。

その他の治療費用のデータと事例(300万円以下)

軽い治療に対しても、高額な医療費が必要です。少し医者に診てもらうだけで、数万円かかると覚えておきましょう。

外来初診料(ローマ、2013年*4) 2万円
救急車の料金(ローマ、2008年*2) 無料(公営)
入院保証金(ローマ、2013年*4) 公立は不要、私立は必要(金額は病院による)
アキレス腱断裂の手術費用(ローマ、2013年*4) 30万円

■類別/保険金お支払い項目
ホテルの階段で転倒し、顔面強打(事故地ナポリ)
■事故の内容
Mさん(女性67歳)は、ナポリのホテルに滞在中に階段を踏み外し、転んで顔面を強打してしまいました。その後病院を受診して入院。帰国後も通院しました。同行していた夫も、延泊して看病に当たり、一緒に帰国しました。
■お支払い
傷害治療費用779,802円
救援者費用1,723,536円
合計2,503,338円

↑以上の事例は300万円未満のもの。

イタリアの医療制度と実際の病院体験談

覚えておくべきポイントとしては、

●外国人は私立病院かクリニックでの受診が多い(値段は高い)
●時間的に制約のある旅行者は公立総合病院の救急が適当
●公立病院はすぐに診てもらえないので無理
●公立病院は機能性や清潔感に欠ける傾向あり
●公立病院は手続きは全てイタリア語。英語ダメな医師も多い

という感じです。ネタ元も掲載しておきます。

医療は日本および他の西欧先進諸国と同様の水準にあり,医療機関を選択すれば本邦と比較して医療技術・設備などに遜色はありません。…(省略)…海外旅行医療保険などに加入している外国人は,自由診療の私立病院あるいはクリニックに受診することが多くなります。私立病院は,大概英語が通じ医療環境も良好ですが,医療費は高額です。また,公立病院や私立病院に籍を置く医師がかけもちで個人開業する,いわゆるプライベートクリニック(外来中心の完全予約制クリニック)も市中のいたるところで機能しています。しかし,外来診療が主で検査,入院施設は基本的になく,患者は検査を外部の検査専門機関で受け,外科的処置や小手術は必ずしも受診時に行えるとは限りません。時間的に制約のある旅行者は,最初から公立総合病院の救急への受診が適当と思われます。また,近年ツーリスト・メディカル・ガードが設置され,救急が受け付けないような簡単な初期診療・処置,薬購入のための処方箋等を外国人旅行者にも施してくれるところが出来てきています。何れにせよ,概して高額な当国の医療費に備えて各種海外旅行保険への加入を強く勧めます。

普通に公立病院に行くと、かなり待たされて、大変なようです。公立病院とプライベートクリニックの違いに関しては、↓こちらの、ローマ在住32年の方のブログが詳しいです。(記事全文を読むと、より一層わかりやすいです)

公立の病院は予約がいっぱいで、診察や検査でさえ、最低3ヶ月待ち。入院、手術となると半年から1年待ちなんてことは当たり前なのです。そして、施設が・・あまりにもひどい・・公立病院の医師は、優秀であればあるほど、勤務時間外の午後に完全予約制で開業(ビルクリニック)しており、そちらの患者のために私立病院と提携しているのです。

プライベート・クリニック!これはもう、公立病院とは比較にならないくらいの設備とサービスで、まるでホテルかと思うくらいです。ただし、自由診療なので、とんでもない高額なものとなります。私の出産。帝王切開ではありましたが、1週間の出産入院費だけで約200万円かかりました。これ、20年前の話ですよ~もちろん、プライベートクリニックにも色々あるので、もっと安いところや、一部保険が使えるところがありますが

↓国公立病院は手続きがイタリア語になる、という点でも、旅行者にはハードルが高い模様。

国公立病院の場合、受診はすべてイタリア語による書類と煩雑な手続きを要するため、日本の旅行者向きではありません。従って自由診療による私立病院での診療となるので、受診予約は必須です。しかしここも医師多忙の国ですので、診療予約はなかなかすぐにというわけにはいきません。但し、緊急の場合には、国公立病院の救急窓口 Pronto soccorso を利用することになります。ここでは非居住者であっても無料で応急処置を受けられることが多く、予約は不要です。従って交通事故に遭った場合には最寄りの Pronto soccorso へということになります。大都市には歯科、眼科等の専門救急病院があり、24時間体制で患者の受け入れが出来るようになっています。

↓なんと、公立病院だと、救急車で運ばれても、何時間か待たされることもあるんだそうで。。。

医療水準には問題ありませんが、公立病院は私立病院に比べて、機能性や清潔感に欠ける傾向が見られ、また英語を解さない医師が多いです。一般に救急車で搬送される公立病院(救急病棟)では、無料で治療が受けられますが、常に混雑しており、患者搬送後、何時間も待たされる場合が少なくありません。このような事態をできるだけ避けるには、私立病院での治療を選択する方がよいでしょう。なお,私立病院での医療費は高額なため,海外旅行障害者保険に加入することをお勧めします。

救急車のことだけではなくても、イタリア在住の方々は、ほんと、病院で苦労されているようです。イタリア生活8年の方も、↓こう言っています。

イタリアにいるとね、病院に本当に行きたくなくなるわけ。なんでかってと、イタリアの病院システムが、これまた本当に本当に時間がかかって、もぉーそんなんしとる内に治ったわいっ、といいたくなる位時間がかかるわけ。

上でも紹介したローマ在住32年の方も、「イタリアの病院は時間がかかる」と言っています。↓

バカンス前の7月に私が謎の腹痛に襲われたことを覚えていらっしゃるでしょうか?
あの時だって、紹介された大学病院の医者にアポイントを取る電話をしたら、「今からだったら9月下旬の3ヶ月後になります」←保険内診療
あの~、私は今、お腹が痛いんですけど~
「では、自由診療にされますか?それなら3日後に予約できます」←これだって遅い!(今では公立の大学病院でも自由診療ができるのです)それで、結局、公立の大学病院に自由診療でかかったわけですが、当然、その頃はお腹の痛みも収まっていて、全く行った意味がなかったのです。これで、いくら取られたと思いますか?診察時間、10分。結論は、「たまたまの腹痛だったんでしょう」これで、270ユーロ(約3万円)取られたのです!
プンプン!ばかばかしいったらありゃしない!

とにかく、緊急の場合は、救急病院に行くしかないです。それ以外に道はありません。ちなみに、救急なら、外国人旅行者でもパスポートを持っていれば診療してもらえます。以前は無料でしたが、結局、行き場のない患者さんの皆が皆、救急に駆け込むため、お金を取ることに決めたそうです。と言っても、大した額ではなく、確か10ユーロ程度の一律料金だったように思います。

300万円以上の高額支払い事例

治療費用300万円以上の事例(医療搬送を含まないもの)

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
事故 車に轢かれ救急車で搬送。多発外傷。手術。家族を呼び寄せ。 (2015年*1) 637万円
病気 腹痛で受診。腹膜炎を併発した虫垂炎。手術。家族を呼び寄せ。(2009年*1) 10日 573万円
事故 ナヴォーナ広場で転倒。上腕骨・肘部複雑骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2013年*1) 9日 404万円
事故 階段で転倒し、腕を痛める。上腕骨の骨折。手術。(2008年*1) 11日 396万円
事故 空港で転倒し膝を強打。膝蓋骨骨折。手術。家族を呼び寄せ。(2011年*1) 11日 357万円
病気 フィレンツェのウフィツィ美術館内で倒れ救急車で搬送。くも膜下出血。(2014年*1) 2日 344万円
病気 バチカン美術館を観光中に腹痛があり、夕方下血。救急車で搬送。潰瘍性大腸炎。家族を呼び寄せ。(2014年*1) 8日 330万円
病気 ホテルで入浴中に失神し救急車で搬送。原因不明の失神と水の誤嚥。家族を呼び寄せ。(2014年*1) 8日 320万円
病気 腹痛が続き救急車で搬送。卵巣嚢腫。手術。家族を呼び寄せ。(2014年*1) 4日 318万円

↓次に、さらに高額となる医療搬送が必要になったときの費用を見てみましょう。

イタリアから日本へ移送費&実際の事例

医療搬送チャーター機イメージ

チャーター機での医療搬送は、1時間につき約80万円かかる*8

↓飛行機での医療搬送は、定期便か、チャーター便かで、かなり価格が変わります。

定期便利用の場合

合計 約250万円
(2013年*4)
・移送費は利用する航空会社および時期で変わる
・付き添い医師1名、看護師1名
・座席を6~10席確保し、ストレッチャー利用
・定期便のメリットは、安いこと。
・デメリットは断られることもあること(感染症の疑いや、繁忙期など)

チャーター便利用の場合

合計 約2,240万円
・チャーター費用 約2,080万円(2011年*8)
・その他費用 約160万円
(その他費用の内訳)付添い医師1日20~40万円、付添い看護師1日約10万円、医療機材4万円、現地病院〜空港の車移送3~5万円、宿泊費用(遠路の場合)1人1泊1.5万円(以上、2009年*5)、成田空港〜都内病院の車移送 10~25万円(2013年*9)

・チャーター便のメリットは断られないこと。デメリットは高額であること。

ただし、各国の全データから見て「ヨーロッパからの医療搬送で、チャーター便はほとんど使われていない」ことがわかるので、ヨーロッパからの医療搬送は定期便で考えてよいのではないか、と私は思います。

イタリアから日本への医療搬送の事例

事故で医療搬送

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
山道で転倒。20m滑り落ち岩に頭を強打。ヘリコプターで搬送。全身打撲・脊髄損傷。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2013年*1) 10日 1344万円
自転車で転倒。肋骨・鎖骨の骨折。医師と医療搬送。(2009年*1) 32日 1343万円
土産店内の階段で転倒、股関節を痛める。大腿骨頚部骨折。手術。看護師と医療搬送。(2006年*1) 51日 969万円
ホテルの部屋で転倒し救急車で搬送。腰椎圧迫骨折。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) 7日 829万円
ホテル内で転倒。大腿骨頸部骨折。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2010年*1) 19日 817万円
ホテルのバスルームで滑って転倒。脛骨・腓骨骨折。 手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2016年*1) 11日 578万円
滞在先のアパートメントで転倒し救急車で搬送。大腿骨頸部骨折。手術。看護師と医療搬送。(2016年*1) 11日 513万円
ミラノ大聖堂前の階段で転落し顔面を強打。2日後吐き気と頭に振動を感じ受診。頭部外傷。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2012年*1) 13日 480万円
横断歩道を歩行中に転倒し膝を強打。膝蓋骨骨折。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2014年*1) 8日 477万円
スキー中に転倒。鎖骨・肋骨骨折。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2011年*1) 6日 386万円

病気で医療搬送

状況(年度、出典) 入院日数 保険金支払額
ホテルで頭痛と吐き気を訴え倒れる。くも膜下出血。手術。医師・看護師と医療搬送。(2007年*1) 36日 2314万円
食事中に手足が痺れ、歩行不能となる。脳内出血。手術。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2008年*1) 24日 1774万円
バス乗車中に気分の悪さを訴え病院へ搬送。脳梗塞。医師と医療搬送。(2009年*1) 16日 1063万円
倦怠感と胸痛が続き、救急車で搬送。ウィルス性心筋炎。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) 21日 1003万円
クルーズ船内で頭痛・咳が続き下船し救急車で搬送。肺炎。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) 17日 1003万円
片足が麻痺し呂律が回らなくなり救急車で搬送。脳内出血。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) 14日 996万円
咳が止まらず胸に違和感を覚え受診。気胸。手術。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) 10日 826万円
腹痛で受診。S状結腸穿孔・腹膜炎。手術。家族を呼び寄せ。看護師と医療搬送。(2008年*1) 15日 737万円
呼吸困難を訴え受診。肺炎・腎不全。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2006年*1) 18日 635万円
クルーズ船内でめまい・嘔吐・足が動かなくなり下船して受診。脳梗塞。看護師と医療搬送。 (2015年*1) 17日 630万円
トレッキング中に呼吸困難となり救急車で搬送。代謝性アシドーシス。家族を呼び寄せ。医師・看護師と医療搬送。(2014年*1) 16日 629万円
昼食時に痙攣を起こし病院へ搬送。脳内出血。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2008年*1) 9日 566万円
発熱・冷汗を訴え受診。くも膜下出血。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2010年*1) 26日 529万円
喉の痛みと息苦しさを訴え受診。扁桃周囲膿瘍。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2008年*1) 5日 449万円
体の自由が利かなくなり、言葉もしゃべれなくなる。脳内出血。医師と医療搬送。(2006年*1) 24日 432万円
腹痛を訴え受診。尿管結石。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2006年*1) 4日 430万円
頭がくらくらした後、吐血し救急車で搬送。出血性胃潰瘍。手術。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2014年*1) 9日 368万円
往路機内で意識を失い到着後に搬送。肺塞栓症。家族を呼び寄せ。医師と医療搬送。(2013年*1) 8日 301万円

イタリアから日本への医療搬送の費用が約250万円だとすると、それを差し引いた医療費の最高額は2164万円。これが現在までのイタリアの医療費の最高額です。ということは、イタリア滞在では、保険の「治療費用」の項目で2000万円あれば安心と言えると思います。

最低でも、イタリアで治療費用は600万円は欲しいと私は思います。

以上が、医療搬送のデータです。ただし、この医療搬送、利用するかどうかは自分で選べます。「医療搬送は自分には不要」と割り切れば、海外旅行保険の保険料を大幅に節約できます。

医療搬送が必要かどうかの判断=大幅な節約

定期便でさえ約250万もかかる医療搬送。これは必ず必要なものなのでしょうか?

保険代理店に尋ねてみたところ「もちろん医療搬送も、やるかどうかは自分の判断(家族判断)になります」とのこと。では、医療搬送を希望する人というのは、どういう人で、どういう理由で希望するのでしょうか?

医療搬送はシニア層(65歳以上)が多い

ジェイアイ傷害火災が発表しているデータ(出典)によると、こんな事実が判明しています。

  • 300万円超の高額医療事故はシニア層(65歳以上)が約半数である
  • 2014年度 高額医療事故TOP5のうち4件がシニア(9,335万円〜1,888万円)

また、ジェイアイ傷害火災とエイチ・エス損保が公開している合計500件以上の事故事例(*1*7)を一つ一つ調査したところ、↓このような事実もわかってきました。

  • 1000万円超の高額医療事故73件のうち61件(84%)が医療搬送。
  • 医療搬送を病気に限定すると、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞など、シニアに起こりやすい病気が多い。

このように見ていくと、シニア層(65歳以上)であるかどうかによって、医療搬送の可能性は、かなり違うことがわかると思います。65歳未満の場合は、医療搬送の可能性は、かなり低いと言えると思います。

また、逆の面から見ると、医療搬送は本人(家族)の希望で行うものであることから、「シニア層が医療搬送を希望することが多い」とも言えます。

医療搬送では、チャーター便が特に高額なので、「チャーター便は利用しない」と決めるだけでも、必要な補償額は、かなり減ります(=保険料の節約になります)。

医療搬送を希望する人は、どういう理由で希望するのか?

本人(もしくは家族)の希望で行う医療搬送。日本への医療搬送を希望する理由は、どういうものなのでしょうか?調べてみたところ、3つの理由に集約できました。

日本への医療搬送を希望する人の3つの理由
1. コミュニケーションの不安
2. 現地の医療水準が不安
3. 金銭的な不安

↑これら3つの不安をクリアできるなら、保険料の節約のために「医療搬送は不要」と割りきってよいことになりますね。

「医療搬送は不要」と割りきったとき、どうすべきか

では、今度は、重要な、「高額な医療搬送を断るなら、どう対応したらいいか」という問題を考えてみましょう。上記の3つの不安それぞれに対して考えてみます。

1. 「コミュニケーションの不安」への対策

これに関しては、日本の海外旅行保険は通訳費用も負担してくれるので安心です。通訳がいれば、最低限の意思疎通は問題ないでしょう。日本と同レベルの「かゆいところに手が届く」ほどのサービスは望めないかもしれませんが、それは仕方ないと割り切るしかないでしょう。

2. 「現地の医療水準が不安」への対策

ここ最近、日本以外の国の医療水準は、急速に上がってきています。さらに言えば、ほとんどの国に、外国人や富裕層向けの、高額だが医療水準の高い「ビジネス病院」があるものです。海外旅行保険に加入している日本人旅行者は、ほとんど、こういう病院を利用することになります。ですので、現地の医療水準を、国全体や、その地域全体で考えてはいけません。

とは言っても、イタリアは国全体からしても医療水準は高いです。外務省 在外公館医務官情報のホームページにも、↓このように書かれています。

医療は日本および他の西欧先進諸国と同様の水準にあり,医療機関を選択すれば本邦と比較して医療技術・設備などに遜色はありません。

バンコクの医療関係者の方で、医療搬送にも携わり、医療搬送の難しさと高額さをよく知っている方が、ブログ(2013年の記事)中で、↓こう書かれています。

そろそろ海外で罹災した日本人患者は何でもかんでも日本の医療機関だけを妄信するのはやめたほうがいいのでは?と言わせていただきます。韓国、バンコク、シンガポール、マレーシアのビジネス病院のレベルは、日本の総合病院と医療レベルにおいて遜色はなくなっていますし、サービスレベルで行くと日本よりもはや上になっています。…(省略)…従いまして、もし海外で不幸にも病気や怪我をした場合は、現地でも十分対忚できる医療機関があるかもしれないことを考て、そこからどこでどのように治療計画を立てるか柔軟に対忚するのが肝要かと思います。

ですので、イタリアでは、医療搬送ではなく現地で治療を続けるという選択肢もアリかと、私は考えます。

3. 「金銭的な不安」への対策

金銭的な不安というのは、具体的には、例えば、「集中治療室(ICU/CCU)の費用が一日数十万円かかるので支払いが大変。医療搬送の費用を払ってでも、早く保険の利く日本で治療を受けたい」というような場合です。

イタリアの場合は、集中治療室(ICU/CCU)の費用が1日約15万円ほど。結構かかります。

これに対しては、また先程のバンコクの医療関係者の方のブログが参考になります。

日本以外の多くの国では、医療機関ごとに医療レベルの差、病院費用の差が存在しますので、患者や家族がどのレベルの病院で治療を受けるかという選択をしなければならなくなることがあります。

つまり、簡単に言えば、「病院のレベルを下げれば医療費も下げられる」ということです。高級ホテルのような病院をやめて、地元の人も利用するような普通の病院を利用するだけで、かなりの節約になるはずです。

ですので、保険会社に病院を手配してもらうときには、少し遠くても、医療費が比較的安い地区の病院をお願いする、というのも、一つの方法でしょう。

例えば、医療費の高いスイスでは、ドイツまで治療に行く人もいます。イタリア国内でも、自分が滞在する地区に近いところで、どこの病院が医療費が安いのかを調査しておくことも、自衛手段の一つとして大切です。

節約方法のまとめとしては、2つの選択肢、つまり「医療搬送をお願いして日本で治療」を選ぶか、それとも「医療搬送せずに、現地で病院のレベルを下げて治療続行」を選ぶか、よく考えて選択する、ということですね。

以上、3つの対策でした。

上の3つの対策を読んで、自分もできそうなら、「医療搬送必要なし」と割り切ることができるでしょう。無理そうなら、医療搬送になった場合も計算に入れて「救援者費用」の項目を多めに準備するようにしてください。

まとめ

イタリアへ行くときの海外旅行保険は、

  • 治療費用は、最低600万円。2000万円あれば安心です。
  • 救援者費用は、医療搬送不要なら200万円。医療搬送が必要なら450万円に。

救援者費用に関して

医療搬送が不要の場合、救援者費用は200万円でいいでしょう。200万円あれば家族が日本から駆けつける費用分を支払えるからです。200万円という数字なら、年会費無料クレジットカード1枚でカバーできる額です。

ただし、医療搬送を必要と考えた場合は、救援者費用は450万円は必要です。450万円でしたら、保険付帯カード3枚でカバーできます。

治療費用に関して

治療費用600万円という数字は、クレジットカード付帯保険でカバーするとなると、カード3枚で足りる額です(治療費用補償など死亡補償以外は、カードを複数持っていると、限度額が上乗せされます)。さすがに、この額だと、ゴールドカードでも1枚ではカバーできないことが多いので、やはり、保険付帯カードが最低2枚は必要になります。(参考:ゴールドカード比較表)。

3ヶ月以上の滞在の場合は、この治療費用の額を確保しようと思うと、カード付帯保険だけでは少し厳しいです。カード付帯保険で3ヶ月以上をカバーさせたい場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。⇒90日以上の長期海外旅行保険もクレジットカードで[利用付帯裏技]

半年以上の滞在の場合は、有料保険を使うべきです。有料保険の節約方法は、こちらで紹介しています。⇒半年〜1年など長期海外旅行保険の節約方法3つ

参考にさせていただいた文献リスト

保険会社の皆様、貴重なデータの公表、ありがとうございました!
*1 ジェイアイ傷害火災HP 海外での事故例(2002~2016年)
*2 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2008年のデータ)
*3 ジェイアイ傷害火災HP 海外の医療事情(2004年のデータ)
*4 東京海上日動 世界の医療と安全2014年
*5 東京海上日動 世界の医療と安全2010年
*6 AIU 海外での盲腸手術の総費用2008年(AIU海外留学保険総合案内サイト)
*7 エイチ・エス損保 旅行先でのトラブル事例
*8 チャーター機の料金は、アークEFI航空情報センター 航空機チャーター事業部(参考料金一覧)を参考に「1時間80万円×2(往復)×日本までの飛行時間(google mapより)」で計算。
*9 ④搬送費用 先端医療情報サイト ハロードクター
*10 外務省 在外公館医務官情報 アメリカ合衆国(ニューヨーク) 4.衛生・医療事情一般

以下、参考にしたデータ・情報

現在の為替レート:1ユーロ=[rate_Exc amount=”1″ from=”EUR” to=”JPY”]円 (←googleからの自動取得値)

2013年 1ユーロ127〜139円
2009年9月7日 1ユーロ=約133円
2008年2月 1ユーロ=約155〜161円
2004年3月 1ユーロ=約132円